20260620

猫の島で長女と過ごす時間

長女は今年の4月から、進学のため新潟に引っ越していきました。

その長女が「旅行で仙台に行く」と言うので、それなら面白そうだと、僕も関西から合流することにしました。

待ち合わせ場所は宮城県石巻市。

ここから船に45分揺られて、田代島へ向かいます。

4月1日に伊丹空港で見送って以来、約2カ月ぶりに会った長女は、なんだか少し大きくなったような気がしました。

「久しぶり!なんか貫禄ついたね」

と言うと、

「どういう意味やねん!」

と、さっそくツッコまれました。

船のデッキでは波しぶきの洗礼を、景色を楽しむどころか体はびしょ濡れに。それもまた楽しい。

やがて船は小さな船着き場に到着しました。

島の細い道を歩きます。

車は一台も走ってこない。

そして道端には猫が寝そべっている。

そう、ここは猫の島として知られる田代島です。

猫と出会い、目を合わせ、コミュニケーションを取っているような、取っていないような。しばらくするとまた歩き出し、少し進むとまた猫に出会う。

そんなことを繰り返します。

島の周囲は急峻で、平地はほんのわずか。歩けば当然のように坂道になります。

坂を上った先には猫の神社があり、50年前に廃校になった小学校はカフェになっていました。人も猫も、それぞれ好きな場所でのんびりしています。

船は一日3便。

帰りの船が出るまで、まだ4時間あります。

僕たちは「猫に会うこと」それだけを目的に、この島までやってきました。

「島の反対側の灯台まで歩くぞ」とか、「猫100匹に名前をつけるぞ」といった野望はありません。

猫たちと同じくらいのんびりと、島の時間を過ごすことにしました。

たくさんいる猫の中で、どいつがボスなのかを予想したり、小さな路地をあてもなく歩いたり。

歩いたり、休憩したり、猫を撫でたりしながら、色々な話をしました。

長女が学校で入ろうと思っているサークルのこと、新潟はバイトの時給が低いという話、夏に行く家族旅行の計画。

本当、他愛もない話ばかり・・・

初めて見る海、初めて歩く道。目の前に広がる美しい景色。そういうものは、僕の年齢になってもやっぱりわくわくするものです。

でも、この旅で一番よかったのは、たぶんそういうことではなかった。

どうでもいい話をしながら長女と過ごした時間。

ぼくが年を重ね、子供が大きくなるにつれ、こうして一緒に歩くことも、自然と減っていくのだろうと思います。

そう考えると、猫の島で過ごしたこの4時間が、なんだかとても尊い時間に思えました。

河田洋祐