
長女は今年の4月から、進学のため新潟に引っ越していきました。
その長女が「旅行で仙台に行く」と言うので、それなら面白そうだと、僕も関西から合流することにしました。
待ち合わせ場所は宮城県石巻市。
ここから船に45分揺られて、田代島へ向かいます。
4月1日に伊丹空港で見送って以来、約2カ月ぶりに会った長女は、なんだか少し大きくなったような気がしました。
「久しぶり!なんか貫禄ついたね」
と言うと、
「どういう意味やねん!」
と、さっそくツッコまれました。
船のデッキでは波しぶきの洗礼を、景色を楽しむどころか体はびしょ濡れに。それもまた楽しい。
やがて船は小さな船着き場に到着しました。
島の細い道を歩きます。
車は一台も走ってこない。
そして道端には猫が寝そべっている。
そう、ここは猫の島として知られる田代島です。
猫と出会い、目を合わせ、コミュニケーションを取っているような、取っていないような。しばらくするとまた歩き出し、少し進むとまた猫に出会う。
そんなことを繰り返します。
島の周囲は急峻で、平地はほんのわずか。歩けば当然のように坂道になります。
坂を上った先には猫の神社があり、50年前に廃校になった小学校はカフェになっていました。人も猫も、それぞれ好きな場所でのんびりしています。
船は一日3便。
帰りの船が出るまで、まだ4時間あります。
僕たちは「猫に会うこと」それだけを目的に、この島までやってきました。
「島の反対側の灯台まで歩くぞ」とか、「猫100匹に名前をつけるぞ」といった野望はありません。
猫たちと同じくらいのんびりと、島の時間を過ごすことにしました。
たくさんいる猫の中で、どいつがボスなのかを予想したり、小さな路地をあてもなく歩いたり。
歩いたり、休憩したり、猫を撫でたりしながら、色々な話をしました。
長女が学校で入ろうと思っているサークルのこと、新潟はバイトの時給が低いという話、夏に行く家族旅行の計画。
本当、他愛もない話ばかり・・・
初めて見る海、初めて歩く道。目の前に広がる美しい景色。そういうものは、僕の年齢になってもやっぱりわくわくするものです。
でも、この旅で一番よかったのは、たぶんそういうことではなかった。
どうでもいい話をしながら長女と過ごした時間。
ぼくが年を重ね、子供が大きくなるにつれ、こうして一緒に歩くことも、自然と減っていくのだろうと思います。
そう考えると、猫の島で過ごしたこの4時間が、なんだかとても尊い時間に思えました。
河田洋祐


